焼き芋のお約束


1号は 一時間以上かかって 学校から家に帰ってくる。

道をジグザグに歩いて、両側にある店を冷やかしたり、
張り紙を読んだりしてるらしい。

一人で登下校を始めたころは、
「まだ帰ってこない、」「まだ」、「どうしたんだろう、まさか」と心配してたが、



もう心配しないことにしている。


しかし今日は、かえって来るべき時間ごろに電話が鳴ったので
ドキッとした。

事故か?苦情か??



1号自身の声だった。

「あのね、焼き芋の店あるでしょ、いいにおいのところ、
俺が通るところ、今日は寒いですねって言ったら、おいもくれるから後でお母さんとおいでっていったの、絶対行くってその約束したからお母さん今すぐ来てね」

やっぱり 意味がわからない内容だ。

お金持ってないのに 公衆電話もあのあたりにはないのに、

どうやって電話してるんだろう。

「どこからかけてるの?」

1「お肉屋さん!知ってるでしょう」

「どこのお肉や?芋やさんじゃないの?今、芋の話してなかった?」

1「お肉屋さんだって言ってるでしょう、今すぐね、もうすぐしまるから、
来てね、わかった?」

3号が 乳くれ〜ぎゃーぎゃーいってるし、
生協の配達がくるのを もらいに行く時間にもなっているし。

「今はいけない、とりあえず、1号、帰ってきて。

絶対後で行くから、一緒に行こう、約束する」

といったら、「約束したのになんでいけないんだ」とか何とか 不満を言いつつ電話が切れた。
1号との約束を破ると 数年間 ぶちぶち言われるのだ。

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30分後に 1号を自転車のうしろに乗っけて、芋やさんに行った。
3号は お乳はやったものの、泣き止むまで抱っこできずに。
「ついてきたい」とぐずぐず泣く二号も置いて。

全員で行っては間に合わないし、、、雪だし。
しょうがない。

閉店ぎりぎりだと思うし、10分くらいでもどれるだろう。

「こんにちはー!おれ、ちゃんときたよー!!」

といって、お客さんようの休憩所に置いてあるポットのお湯を
湯飲みに注いでいる。

「あらーさっきのこ、本当に、来てくれたのね」

「それお湯よ、お茶にしたいなら 急須に入れてね」

「急須って言うのはその茶色いものだよ」

と、数人の店員さんが 一言づつ1号に言ってくれている。




私は 列に 並んで、芋を買っていたのだけど、

「おかーさんの分もお茶注いだ!」
と1号が大声で言うので、

「ああ、あのこの お母さんでしたか、
これ店長から。入れときますね」
といって 芋を一個余分に入れてくれた。


どう〜も、1号が学校帰りに芋やさんで

店員さんたちのお邪魔をしたらしい、

忙しいし、早く帰りなさいね、という意味を暗にこめて、 
お母さんと後でおいでね って言ってくれたんじゃないかな。

本当にくるとは思わなかった という感じなので。

1号は悠長に芋を割り(えっ、ここで食べて行くの??)、

お茶をゆーっくり のみ、

「おいしいね、、、」
「あったまる、、、」

などといっている。私は早く帰らなくちゃーっとあせっているのだけれど。

しかも1号は サツマイモが好きでないはずなんだけれど、、、?

「俺、いっぱいは食べないけど 少しは食べられるんだよね」
「お母さんは俺と芋が食べられて幸福(こうふく)でしょう」などといっている。


家にもどったら、二号は、ギャンギャン泣きになっている3号に、

指を握らせて 歌を歌って なだめようとしていた。

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