まいごの留学生

10年ぶりかと思うくらいの雪が降った。
子どもらは当然、初めてのことなので 喜んでびしょぬれになるまで遊んでいた。

夜8時ころ、だんなが、「タバコ買ってきて、3は置いていっていいから」というので 小銭だけもってコンビニに行った。
数メートル先も見えないほどふっている。


そこで、お金を払っていたら、片言の英語で、地図を広げて店員さんに道を尋ねている人が居た。

インド人?に似ているがもっと濃度が薄い感じ。

店員さんは女子高生か短大生という感じの女の子二人。
ぜんぜんお互いが通じていないみたい。
外国人が必死になっているのに店員さんたちはあいまいに笑うばかり。

地名が聞こえたので、

「そこなら、あのショッピングモールの裏あたりですよ」

と声をかけた。

「Can you speak English?」

とその人が言うので、Yes a little
といって地図を見せてもらった。
店員さんたちは「よかったー!」といっている。

地図はパソコンでだしたGoogle mapで、雪にぬれて印刷がにじみ、千切れかけている。
この地図で今いる場所はどこ?ときかれたが、
地図に、今居る場所は載っていない。

目印になるとこまで送ってあげる、
といってその人と外に出た。
かさ持ってる?と聞いたが持ってないという。

その人は、しきりに恐縮がるけど私は暇だし、
雪の降る中 この辺をぐるぐる回って時間がすぎるのもかわいそう。

話を聞くと、どうも、インドネシアから来た学生で、今日飛行機で日本についたばかりらしい。

自分が空港についた日、だんなの留学のときのことをおもいだした、
(だんなはひとつきほど先に行っていた)私と、当時一人っ子の1号を連れて、乗り継ぎでウロウロ、ついてもフラフラ、電話のかけ方も小銭の種類もわからず、飛行機の時間もいい加減だし、不安だったなあ。


彼は空港から電車で駅について、友達いわく「10分くらいで すぐわかるから」と聞いていたので歩き出した(が ぜんぜん違うほうに迷い込んだらしい。)

「ここは地図ではこれ、わかる?」と聞いたがわからないと。

目印はいくつかあるんだけど、雪のせいでぜんぜん見えないので、説明もできない。

「家まで送ってあげる」

といったら、遠くなるから悪い、帰り道はわかるの?といっているが、
10m先も見えないのに、ほおり出すわけにも行かないし。

公衆電話から、地図に書いてある彼の友人たちに電話をかけても全部つながらないし。

結局、普段なら駅から10分くらいの道を、駅に戻るのと、雪のせいで30分くらいかかって送っていった。

送ってすぐ、公衆電話から 家にかけると、だんながかなり怒っている。

ずぶぬれで家についたのは、出てから4,50分後だった。

二号も お風呂に入らず待っていたから、3といっしょに、3人でお風呂に入る。
「おとうさんは コンビニに探しに行って、雪だるまのようになって帰ってきたから」と二号が言った。

だんなは、女子高生みたいな店員さんたちに「タバコを買った30代の女性居ませんでしたか」と聞いたけど
店員さんたちは「さあ」「知らない」といったそう。

田舎のコンビニでお客さんは少ないし、「その人なら 道を教えに行きました」って言ってくれたら 叱られずにすんだのに。
と店員さんたちをちょっと恨んだが、そこまで求める筋合いもないんだろうなとあきらめる。(私も18のときはコンビニ店員だった。通常業務だけでアップアップしていたから。ついでに言うとあまりに覚えが悪く首になった)

まあ、彼が無事に家についてくれたからいいやと思うしかない。